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なぜ日本の歯科は“誰がやっても同じ値段”なのか──アメリカとの決定的な違い

2025.09.07

先日、ニューヨーク大学 補綴科 山野先生のセミナーに参加しました。毎年のように海外の歯科治療の最新情報に触れることは、私にとって非常に大きな学びの時間です。今回も多くの気づきをいただきましたが、その中でも特に印象的だったのは、アメリカと日本の医療制度の決定的な違いについてのお話でした。

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🇯🇵 日本の制度:誰が治療しても同じ料金

日本の保険診療では、新人が治療を行っても、ベテランが治療を行っても、患者さんが支払う治療費は同じです。
これは一見すると公平な制度のように思えますが、実際には「誰にあたるか」で治療の結果が大きく変わるという現実があります。

特に大学病院は教育機関です。教育の場であるからこそ、新人医師や研修医が治療に携わることは避けられません。しかし、患者さんはその仕組みを理解せずに受診すると、「あたりはずれ」を感じることになるのです。大学病院は教育の使命を忘れてはならないですし、患者さん側もその点を認識して受診する必要があります。

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🇺🇸 アメリカの制度:技術に応じたランク制

アメリカの歯科医療はまったく異なります。治療を行うのが学生なのか、新米ドクターなのか、あるいは豊富な経験を持つスペシャリストなのかによって、治療費がはっきりとランク付けされています。

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🧑‍⚕️ 患者の自己決定権

アメリカで特に大きな特徴は、患者が自分で治療レベルを選べるということです。
「できるだけ費用を抑えたい」「経験豊富な専門医にお願いしたい」といった希望に合わせて、患者は主体的に治療を選択します。

つまり、技術や経験に応じた適正な対価が制度として確立され、患者自身の選択権が尊重されているのです。治療を“選べる”という安心感は、患者にとって大きなメリットであり、結果として医療全体の透明性や信頼性を高めています。


📊 日本とアメリカの歯科制度比較表

項目日本アメリカ治療費の仕組み新人でもベテランでも同じ料金(保険診療一律)学生・新米・スペシャリストでランク制、料金が異なる治療を行う人大学病院では学生・研修医も治療に関与経験に応じた担当者が明確患者の選択権選択できない(誰に当たるかは運次第)選択できる(費用と希望に応じて治療レベルを決定)評価のされ方技術にかかわらず横並び評価経験や技術に応じて正当に評価される患者側の印象“あたりはずれ”があると感じやすい納得感・透明性が高い

※この表は、制度の特徴を一般的にわかりやすく整理したものであり、細部は州や大学、保険の種類によって異なる場合があります。


制度の違いがもたらす問題点

日本の保険制度では、ベテランの技術が正当に評価されにくく、医療の質が横並びになってしまいます。さらに、治療が中心のままでは病気が増えるほど医療費も増え、国全体の負担は増大する一方です。

本来、医療費を抑え、国民の健康を守るためには、予防中心の制度にシフトすることが不可欠です。治療して点数を稼ぐのではなく、病気にならない仕組みをつくることこそが、持続可能な医療制度につながります。

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私が20年前から伝えてきたこと

私は20年前から、「予防医学にこそ投資すべきだ」と繰り返し伝えてきました。
流行に流されることなく、ぶれずに予防の重要性を訴え続けてきたのは、これが日本の医療を根本から良くする唯一の道だと信じているからです。

定期的なメインテナンスや生活習慣の改善、口腔ケアの習慣化が広がれば、医療費は確実に減り、病人も減ります。結果として患者さんの生活の質も高まり、国の未来も明るくなるはずです。


まとめ

今回のNYU 山野先生のセミナーで学んだのは、制度の違いが医療そのものを大きく左右するという現実です。
アメリカでは「治療のランク」が明確であり、さらに患者自身が治療レベルを選択できる自由があります。

日本の制度をただ批判するのではなく、どうすれば「予防を軸にした医療」へ転換できるのかを考え続ける必要があります。
私はこれからも、ぶれずに予防を伝える姿勢を持ち続け、日々の臨床や発信を通じて、日本の医療の質を高める一助となりたいと思います。

👉 くわしくは今後のブログやこのNOTEで発信を続けていきますので、ぜひご覧ください。

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