2023.04.21
1本の歯を失ってしまった方の治療法
宇都宮市の歯科医院「医療法人KANEKO DENTAL OFFICE」の理事長です。
今回は「失った歯を放置したら体にどんな影響があるか」を書いていますので是非拝読してください。
歯の喪失は口腔健康だけでなく、全体的な健康にも影響
1本ぐらい歯がなくてもあまり不自由を感じない方もいるかもしれません。歯を抜けたまま放置しておくと歯列の変形、歯の移動、前歯がすいてくる、歯槽骨の吸収など、このような変化が起きてきます。(図1)さらに長い時間がたつとかみ合わせがずれて最悪は体の不調和が起きてきます。仕事もいいパフォーマンスができなくなります。
またかみ合う相手の歯がないと歯は伸びてきてしまいます。
例えば上の奥歯がないと、下の奥歯はかみ合う相手がないため歯が上に伸びてしまうということです。(図2)
図1
図2
伸びてきた歯は他の歯と必要以上にぶつかり始めます。
これがかみ合わせの崩壊の始まりです。かみ合わせの崩壊が大きくなればなるほど治療は難しくなりますし、期間は長くなります。
歯を失った場合の治療法①
では1本の歯がなくなった場合どんな治療法あるか説明します。
一つ目はブリッジです。失った歯の両隣の歯を削りかぶせる方法です。(図3)
図3
ブリッジの最大のメリットは、装着直後から欠けた歯を補うことができることです。また、入れ歯と違い歯を磨く際に取り外す必要はありません。デメリットですがブリッジは周りの歯を削って装着するため、その歯を支える根本的な部分が削られ、歯が弱くなってしまいます。そのため、周りの歯が虫歯になったり、歯茎が引っ込んだりするとブリッジ自体にも影響が出てしまいます。
因みに歯は固定しない方が長持ちします。
神経のある歯とない歯では条件が違います。
両脇の歯の神経がある場合、全くきれいな歯を削ることになります。しみるのが続くことがあります。しみることが続けば神経を取らなければならないこともあります。
こちらもデメリットですね。
寿命は約10年と言われています。(メインテナンスが条件)
片方の歯の神経がすでにない、または両脇の歯の神経がない場合の寿命は5〜6年と言われています。神経がなく、歯が歯周病になっている場合などは壊れる時は支えた歯、2本同時になくなることが多いですので壊れたときは3本分の歯を失うことになります。
これが固定式にする1番のデメリットです。
歯を失った場合の治療法②
もう一つの選択肢はインプラントです。インプラントとは失った歯の所(骨)にドリルで穴をあけチタンを埋め込む治療法となります。基本的には3層構造となります。(図4)
図4
インプラントにする1番のメリットは隣の歯を削らない、歯を固定しないことです。
手術が必要なため術前に全身状態を把握するための血液検査、CTによるシュミレーションなどが必要であり、手術後、インプラント体(チタン)が付くまでの期間、約3ヶ月待たなければならないとブリッジに比べると治療期間が長くなります。しかしこれはデメリットとなると私は考えていません。なぜなら経験上、インプラントの方が結果的に長持ちするからです。(メインテナンスは絶対条件)治療費は高額になりますが、歯の崩壊し全身への影響を防げるのであれば健康への投資となり決して高い治療だと私は思いません。
インプラント治療10年経過症例
初診 2009年 女性 22歳 左上の歯が咬むと痛い
※赤丸の所が原因の歯
CT撮影
矢印の所が歯が折れている所です。こうなってしまうと抜歯するしかありません。
治療の選択肢はブリッジかインプラントになります。年齢は22歳です。
この年齢で虫歯でもない歯を削ることが患者さんのこの先の人生を考えたとき
どちらがいいと選択だと思いますか?
患者さんにはそれぞれのメリット、デメリットをお話いたしました。
結果インプラント治療を選択されました。
経過10年のレントゲン写真
赤丸がインプラントです。インプラントも何も問題なく機能していますが、
隣の歯や全体を見てください。10年経ってもまわりの歯の状態は変わっていません。
歯を削らないということがどれだけメリットがあるかということが分かります。それだけではありません。歯を削ってブリッジにすれば少なからずともかみ合わせは変ってきます。かみ合わせが変わったことにより歯ぎしり、食いしばりをするようになったり、肩こり、
頭痛などが歯の治療後に出てきてしまったら何のための治療かがわかりません。
考え方は人それぞれなので歯を失った場合、よく治療説明を受け、自分に合ったより良い治療法を選択するべきでしょう!