プレジデント社の統計で「人生で後悔すること」の第一位は何だと思いますか?
それは「歯を大切にすればよかった」だそうです。
私たちの人生には「あのときやっておけばよかった」という後悔が必ずあります。
「死ぬ前にあの人に会いたかった」「あの国に旅行したかった」。
時間がない、お金がないと理由を並べているうちに、気づけばそのチャンスは過ぎ去ってしまいます。実はこの“先延ばしの習慣”が、若いうちから染みついてしまっている方は少なくありません。
でも考えてみてください。私たちは他人の人生を生きるのではありません。自分自身の人生をどう選ぶか、それが何よりも大切です。
81歳の患者さんの言葉
私の患者さんで現在81歳の方がいらっしゃいます。
10年前にインプラント治療を決断された方です。当時、周囲からは「入れ歯でいいじゃないか」と散々言われたそうです。日本人にありがちな「みんなと同じでいれば安心」という考えに流されそうになったといいます。
しかし、その方は自分の意思を貫きました。「これは自分の人生だから」。
その言葉に私は大きな勇気をいただきました。歯科医師としても、同じように「周りの意見に流されてしまう風潮」に歯がゆさを感じることが多いからです。
そして最近、その患者さんがメインテナンスで来院されたとき、こんなひとことをもらしました。
「入れ歯の人、みんなぼけちゃったね」
その瞬間、私は歯科医師として最高の喜びを感じました。
歯を失うと何が起きるか
年齢を重ねると、歯の喪失は単なる“噛めない不便”にとどまりません。
「オーラルフレイル(口腔機能の衰え)」は食欲低下や栄養不足を招き、結果として「サルコペニア(筋肉量の低下)」や「フレイル(虚弱)」に直結します。
歯を失い、入れ歯でうまく噛めない生活を続けると、体は栄養を取り込みにくくなります。柔らかいものばかり食べているうちに筋力も低下し、転倒や寝たきりのリスクが高まる。そして医療費が一気にかさむのです。
70歳を超えてから医療費が増える理由は、病気そのものよりも「予防を怠った生活習慣のツケ」が表面化するからです。特に歯の健康を軽視したことが、大きな後悔となって跳ね返ってきます。
インプラントは寿命を延ばす?
インプラント治療は単に歯を補うだけではありません。
しっかり噛めることが栄養の吸収を助け、脳の血流を維持し、全身の健康寿命を延ばすという研究も増えてきています。
私が見てきた患者さんの中でも、インプラントで咬合を回復した方は、表情も若々しく、会話もはっきりし、生活の質が明らかに高くなっています。逆に、入れ歯で苦労している方ほど、全身の衰えを早く感じているように見えます。
もちろん、どんな治療にもメリットとリスクはあります。ですが「自分らしい人生を生きたい」という意思を貫いた81歳の患者さんの姿は、迷っている方への強いメッセージになるはずです。
後悔しないために
「歯を大切にすればよかった」という言葉は、決して他人事ではありません。
いま40代、50代の方も、「老後に医療費がかさむ理由」を自分の未来として想像してみてください。
大切なのは「今、行動すること」。
若いうちからの定期的なメインテナンス、必要に応じた治療、そして「自分の人生をどう生きたいか」という意思決定。
歯は人生の質を大きく左右します。
だからこそ70歳を超えて後悔する前に、今この瞬間から考えてほしいのです。
✅ まとめ
70歳から医療費がかかるのは、生活習慣や歯の喪失による
「オーラルフレイル」が原因
入れ歯では栄養吸収が低下し、サルコペニアや認知症リスクが増える
インプラントや咬合の維持は、健康寿命を延ばす大きな要素
「自分の人生をどう生きたいか」を決めるのは自分自身
後悔しない人生のために、歯を大切にしてください。
医療法人 KANEKO DENTAL OFFICE
歯学博士 日本口腔インプラント学会 指導医 専門医
金子泰英