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早くセカンドオピニオンを受けておけば…。「治らない口内炎」の正体【歯科医師が解説】

セカンドオピニオンは「大病の予防」にもつながる

セカンドオピニオンは、治療法に選択肢があることを知り、治療への理解を深めるためのものと考えられていますが、予防という側面もあります。

特に地方では病院が限られていて、専門分野ではないけれども、幅広く診療するという医師も少なくありません。そういったときに、その医師だけを頼るのではなく、ほかの病院の医師に診てもらうことで、不要な薬を飲んでいることに気づいたり、大病につながる疾患が見つかったりすることもあります。

要するに早く動くことで、重篤な病気にならずに済むという、先手必勝的な考えです。

例えば、腹痛が気になって病院に行って、「ストレスです」と言われて薬を処方されたとします。その後、痛みがひかないのでほかの病院に行って詳しく検査したら、初期のがんが見つかったということもあります。患者の伝え方、医師の受け取り方によって診断が変わりますし、その病院に検査機器があるかどうかも診断の違いに関わってきます。

大きな病気に至る前に、おかしいと思ったらセカンドオピニオンを受けて、病気の芽を摘んでおくことは大切です。

セカンドオピニオンで「ステージ4の舌がん」が判明

早くセカンドオピニオンを受けておけば…というケースでは、舌がんが見つかったとある女性タレントの例があります。最初の診療でがんだと診断されていれば、切除する範囲が少なくて済んだのではないかと思います。

彼女のブログによれば、夏に舌の異常に気づき、口内炎だと診断されて、塗り薬や貼り薬、ビタミン剤などを処方してもらったそうです。その後も口内炎が治らず、秋になってかかりつけの歯科医を受診し、レーザー治療で口内炎を焼いています。それでも治らず、口腔外科を受診すると、ステージ4の舌がんであることが分かったのです。

歯科医が舌がんの病名を確定するのは難しいですが、口内炎とは見た目が違うので、歯科医が怪しいと感じることも多いはずです。彼女は手術が成功して予後も順調ですが、セカンドオピニオンを受けることの大切さを教えてくれる事例だと思います。

歯科医院のセカンドオピニオンでがんを予防できた例も

私の場合ですが、患者の口の中を見て、「何かおかしい」と感じたらすぐに連携している大学病院の口腔外科に行ってもらいます。

実際に患者の白板症(口の粘膜が白色に変化する病気)の早期発見で、がん化を防いだこともありました。その患者は、女性タレントと同様に「口内炎みたいなものが治らない」と私のオフィスにセカンドオピニオンで来られたのです。診察すると口内炎ではなく白板症でした。白板症は放置するとがん化することが分かっています。すぐに大学病院を紹介し、切除してもらったので、がんを予防でき、その後の経過も良好です。

また、入れ歯が合わないという方を治療している際に、患者の口腔扁平苔癬(こうくうへんぺいたいせん:皮膚や粘膜にできる角化性)に気づいたこともあります。これも放置しておくとがん化します。扁平苔癬の原因は不適切な入れ歯であることが多く、私が針金の入れ歯をやらない理由はここにあります。

舌がんや粘膜疾患を引き起こす原因の一つに、慢性的な刺激、すなわち合わない入れ歯や、入れ歯の針金があるのです。また、虫歯を放置して歯がとがっている状態が長い時間続き、舌や頬に常に刺激を与えることも口腔がんを引き起こす原因になります。

がん化する病気を早期発見するためにも、口の中で気になることがあれば、歯科で診てもらい、その診断に納得がいかなければ違う歯科に行き意見を聞いてみることが大切です。

患者が自分の固定観念に縛られてしまうという問題

これはあくまで推測ですが、がんで亡くなってしまった著名人のケースを見ても、思い込みが強過ぎてセカンドオピニオンを受けても納得できず、寿命を縮めてしまったのではないかと思われるケースがあります。

有名な歌舞伎役者の妻でフリーアナウンサーだった女性は、乳がんを切除せず温存できる治療法を探し、結果的にがんが転移して亡くなってしまいました。

胆管がんで亡くなった女性タレントは、体にメスを入れることを拒み、腹腔鏡下手術をしてくれる医師を何十軒も病院を回って探したといわれています。胆管がんでは、腹腔鏡下手術は除去しきれずに再発する可能性が高く、推奨される方法ではありません。結果的にはがんが進行し、手術はできたものの帰らぬ人となってしまいました。

患者が自分の固定観念に執着し、専門医のセカンドオピニオンを聞き入れないケースで命を落としてしまうのは、本当に残念です。患者の要望だからと、その人のためにはならない手術や治療を行う医師にも疑問を感じます。

金子 泰英
医療法人KANEKO DENTAL OFFICE 理事長・院長