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低侵襲がいいですよね? 〜静脈内鎮静併用ソケットリフト〜

2025.09.03

低侵襲がいいですよね? 〜静脈内鎮静併用ソケットリフト〜

先週、当院で静脈内鎮静を併用したソケットリフトのインプラント手術を行いました。部位は上顎の奥歯。上顎は骨の厚みが不足していることが多く、そのままではインプラントを入れるのが難しいケースが少なくありません。そこで骨を補う技術としてサイナスリフトやソケットリフトがあります。今回は切開量を最小限に抑えられるソケットリフトを選択しました。

①初診時のCT 

歯が原因で上顎洞に炎症 骨も吸収しています

実は今回の患者さま、半年前に膿が大きく広がった歯を抜歯しています。抜歯の際には、ただ抜くだけでなくCGFテクニックを併用し、自己血由来のフィブリンゲルで骨再生を促しました。この処置をしておいたことで、半年後の現在、良好な骨の再生が確認でき、インプラント埋入に最適な環境が整ったのです。ここが非常に重要なポイントです。抜歯の時点で「その先を見越して準備をしておく」ことが、インプラント成功の大きな鍵となります。

今回の手術では、患者さまの不安を軽減するため静脈内鎮静法を併用しました。ウトウトと眠っているような感覚の中で手術が進むため、恐怖や緊張はなく、「思ったより楽でした」と安心していただけました。

さらに今回は特殊なドリルを使用し、骨を無理に削らずにインプラントを埋入。結果、初期固定は非常に良好で、術後すぐから安定した状態が得られました。腫れや出血もほとんどなく、患者さまは笑顔で「安心しました」とお帰りになりました。

②6ヶ月後 インプラント手術前の写真 上顎洞底部との距離がなくこのままではインプラント体は入らない。

③インプラント手術後 上顎洞粘膜を持ち上げてインプラント体が入りました。

ここで一つ、私の考えをお伝えします。臨床の現場では「7番目の奥歯にまでインプラントを入れるべきか」という議論があります。理論上は7番まで歯列を再現するのが理想ですが、実際の咬合や長期的なメインテナンスを考えると、必ずしも必要ない場合も多いのです。噛み合わせにおいて最も重要なのは6番の大臼歯であり、ここを確実に支えることができれば日常生活に大きな支障はありません。むしろ無理に7番にまで手を広げることで骨造成の負担が増し、将来的なリスクが高まるケースもあります。

もちろん、咬合力の強い方や残存歯の状況によって7番まで必要な場合もあります。大切なのは「誰にでも同じ治療をする」のではなく、患者さま一人ひとりの年齢、骨の状態、生活習慣、清掃環境を総合的に見極めることです。

私たちの使命は、ただインプラントを“入れる”ことではなく、10年20年先まで“噛める人生”を守ること。そのためには、低侵襲で体に優しい方法を選びつつ、不要なことは無理にしない。昨日のケースは、抜歯時からのCGFによる骨再生、静脈内鎮静での快適性、ソケットリフトによる低侵襲性、特殊ドリルによる確実な初期固定——すべてが噛み合った好例でした。

「低侵襲がいいですよね?」という問いに、私は自信を持って「はい」と答えます。必要なことはしっかり行い、不要なことは行わない。その見極めこそが、インプラントの達人に求められる哲学だと考えています。

理事長 金子泰英

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