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上顎奥歯のインプラント治療と骨造成——Densah Barを用いた低侵襲サイナスリフトについて

2026.05.21

上顎奥歯のインプラント治療と骨造成——Densah Barを用いた低侵襲サイナスリフトについて


上顎奥歯のインプラント治療において、骨の高さが不足しているケースは決して珍しくありません。上顎の奥歯は、歯を失った後に骨が吸収されやすく、また上顎洞(副鼻腔)が近接しているため、インプラントを埋入するための十分な骨量が確保できないことが多くあります。こうした場合に必要となるのが「サイナスリフト(上顎洞底挙上術)」という骨造成手術です。今回は当院で実施した症例を通じて、Densah Bar(デンサバー)を用いた低侵襲サイナスリフトについてご説明します。


■ 従来のサイナスリフト(ラテラルウィンドウ法)とその課題

従来のサイナスリフトでは、頬側の歯肉を大きく切開し、上顎骨の側面に骨窓を開けて上顎洞粘膜(シュナイダー膜)を剥離・挙上し、その下に骨補填材を填入するという方法(ラテラルウィンドウ法)が広く行われてきました。

この術式は確実性が高い一方で、切開範囲が広く手術時間も長くなるため、患者さんへの身体的負担が大きくなりやすいという側面があります。また術後の腫脹や疼痛が生じやすく、患者さんにとって心理的なハードルにもなり得ます。さらに、シュナイダー膜を器械的に剥離する操作を伴うため、膜を穿孔するリスクも一定程度存在します。穿孔が生じた場合は修復処置が必要となり、手術時間の延長や術後合併症のリスクが高まります。

こうした課題を解決する術式として近年注目されているのが、専用器具を用いたクレスタルアプローチによるサイナスリフトです。


■ Densah Barとオッセオデンシフィケーションとは

当院では今回の手術において、米国Versah社が開発したDensah Bar(デンサバー)を使用しました。Densah Barは、オッセオデンシフィケーション(Osseodensification:骨圧縮保存技術)という概念に基づいて設計された専用の回転切削器具です。

通常のドリルは骨を削り取ることで穴(インプラント窩)を形成しますが、Densah Barは逆回転させることで骨を外側へ圧縮・密度化しながら穴を形成するという全く異なる原理で作動します。この作用により、骨密度を高めながらインプラント窩を形成することができ、骨質の向上とインプラントの初期固定力(プライマリースタビリティ)の強化が同時に期待できます。

サイナスリフトへの応用においては、歯槽頂(クレスト)側からアプローチしながらDensah Barで洞底骨を圧縮し、上顎洞粘膜(シュナイダー膜)を内側から押し上げます。外側から切開して剥離するのではなく、圧力で膜を持ち上げるため、膜を傷つけるリスクが大幅に低減されます。これにより頬側への切開が不要となり、患者さんへの手術侵襲を最小限に抑えることができます。


■ 術後CTで確認できた骨の挙上

今回の症例では、術前のCT画像で上顎洞底までの残存骨高径が不十分であることが確認されていました。この状態のままインプラントを埋入することは長期的な予後を損なうリスクがあるため、Densah Barを用いたクレスタルアプローチのサイナスリフトを選択しました。

手術後に撮影したCT画像では、上顎洞底部において骨がしっかりと挙上されていることが明確に確認できました。術前と比較して骨高径が増加しており、インプラントが上顎洞内に適切な位置で安定して埋入されていることも画像上で一目瞭然です。シュナイダー膜の穿孔もなく、術後経過は良好です。

Densah Barによるサイナスリフトのメリットをまとめると以下の通りです。

・頬側切開が不要で患者さんへの侵襲が最小限
・手術時間が従来法(ラテラルウィンドウ法)と比較して約半分
・シュナイダー膜穿孔リスクの大幅な低減
・骨圧縮効果によるインプラント初期固定力の向上
・術後CTで骨挙上を客観的に確認可能


■ インプラント治療における骨造成の重要性

インプラントは顎骨にしっかりと結合(オッセオインテグレーション)することで長期的な機能を発揮します。そのためには十分な骨量と骨質の確保が不可欠です。骨が不足した状態のままインプラントを埋入することは、骨結合不全や長期的なインプラント周囲炎のリスクを高め、最終的にインプラントが脱落する原因ともなり得ます。

当院では「骨がないからインプラントはできない」とお伝えするのではなく、骨造成を適切に計画・実施することで、より多くの患者さんに長期的に機能するインプラント治療を提供できるよう努めています。骨の状態や上顎洞との位置関係は患者さんによって大きく異なります。まずはCT撮影による精密な診査・診断を行い、個々の状態に合わせた治療計画を立案することが重要です。

また当院では、患者さんに安心して手術を受けていただくために静脈内鎮静法にも対応しています。静脈内鎮静法とは、点滴から鎮静薬(ミダゾラムおよびプロポフォール)を投与することで、うとうとしたリラックス状態のまま手術を受けていただける方法です。全身麻酔とは異なり意識は保たれますが、恐怖心や緊張が大幅に和らぎ、術中の記憶もほとんど残らないため、歯科治療への不安が強い方や長時間の手術が不安な方に特に有効です。サイナスリフトのような骨造成手術においても、鎮静下で行うことで患者さんの身体的・心理的負担を最小限に抑えることができます。

当院院長はこの静脈内鎮静法とインプラント治療の関係について、国際学術誌Cureus(PubMed掲載誌)に論文を発表しました。「Effect of Intravenous Sedation on Dental Implant Therapy Outcomes: A Single-Center Retrospective Cohort Study With Three-Year Follow-Up」と題したこの後ろ向きコホート研究では、麻酔科医が管理する静脈内鎮静下でインプラントを受けた患者群と局所麻酔のみの患者群を比較し、術後のメインテナンス受診率および3年間のインプラント治療成績を検討しました。日本国内の歯科クリニックにおける実臨床データを用いた本研究は、静脈内鎮静法がインプラント治療における患者エンゲージメントと予後に与える影響を科学的に示した貴重なエビデンスです。当院では、こうした研究に基づいた根拠ある治療を日常臨床に取り入れています。

※こちらがリンクです↓

https://www.cureus.com/articles/466239-effect-of-intravenous-sedation-on-dental-implant-therapy-outcomes-a-single-center-retrospective-cohort-study-with-three-year-follow-up

上顎奥歯のインプラントや骨造成についてご不安をお持ちの方、他院で「骨が足りないためインプラントは難しい」と言われた方も、ぜひ一度当院へご相談ください。最新の器具と技術を用いて、患者さんの負担を最小限にしながら最善の治療をご提案いたします。当院は宇都宮市内において数少ない日本口腔インプラント学会指導医・専門医在籍のクリニックとして、インプラント治療の質と安全性を最優先に考えた診療を行っています。インプラントに関するご質問はどのようなことでも、お気軽にお問い合わせください。


金子デンタルオフィス
〒320-0811 栃木県宇都宮市南大通り1-3-8
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日本口腔インプラント学会指導医  歯学博士 金子泰英

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