お子様の矯正治療を検討される際、多くの保護者の方が「歯並びをきれいにしてあげたい」という思いから相談にいらっしゃいます。その気持ちはとても大切ですが、矯正治療には、見た目を整える以上の意味があります。子供の矯正治療は、歯並びをきれいにするためだけのものではありません。歯並びを整えることは確かに重要ですが、それと同じくらい、あるいはそれ以上に大切なのが「呼吸」です。今回は、子供の矯正治療がなぜ呼吸や睡眠と深く関わっているのかをお伝えいたします。
子供の顎の骨格は、四歳までに成人の約六割、十二歳までに約九割が完成すると言われています。この時期に口呼吸の癖があると、顎の発育に影響が及び、歯並びが乱れるだけでなく、気道そのものが狭くなってしまうことがあります。逆に、鼻でしっかり呼吸できる状態を整えてあげることで、気道が広がり、睡眠の質が向上することが期待できます。
睡眠の重要性については、アメリカでも強く発信されています。アメリカ睡眠医学会は子供の年齢別に必要な睡眠時間の基準を示しており、米国小児科学会もこれを支持しています。基準どおりの睡眠が取れている子供は、注意力や学習面、記憶力、感情のコントロールにおいて良い結果につながりやすく、逆に睡眠不足が続くと、行動面の問題や肥満、抑うつなどのリスクが高まることも報告されています。つまり、子供の可能性を伸ばすためには、良質な睡眠が欠かせず、その入口にあるのが正しい呼吸なのです。単に何時間眠ったかだけでなく、途中で呼吸が乱れずに眠り続けられているかどうかも、睡眠の質を左右する大切な要素です。
いびきや口呼吸を放置したまま大人になり、睡眠時無呼吸症候群と診断されると、CPAPという装置を使った治療が選ばれることがあります。CPAPは有効な治療法ではありますが、正直に申し上げると、小さい頃からCPAPが手放せなくなってしまう状態は、できれば避けたい最悪のケースだと考えています。CPAPはあくまで症状を管理するものであり、気道が狭い、口呼吸の癖がある、顎の発育が不十分であるといった根本の原因を解決するものではないからです。だからこそ、顎の骨格が作られている子供のうちに、呼吸の状態に気づき、対応してあげることに大きな意味があります。
ご家庭でも気づけるサインはいくつかあります。寝ているときに口が開いている、いびきをかく、朝起きたときに口が渇いている、日中でもぼんやりしていることが多いといった様子は、呼吸や睡眠の質に関わるサインである可能性があります。こうしたサインは、歯並びの乱れよりも先に現れることも少なくありません。
矯正治療のタイミングについても、歯が生え揃ってからではなく、顎の骨格が作られている時期に相談していただくことが望ましいと考えています。骨格そのものにアプローチできる時期に対応することで、歯並びと呼吸の両方に、より良い結果が期待できるからです。
当院では、歯並びだけでなく、噛み合わせと気道の状態を含めた総合的な視点から、お子様の矯正治療をご提案しております。いびきが気になる、口がいつも開いている、朝起きても疲れが取れていないといったサインは、体からの大切なメッセージです。お子様の可能性を最大限に伸ばすために、歯並びと呼吸、両方の視点から矯正治療を考えてみませんか。気になることがございましたら、どうぞお気軽にご相談ください。
医療法人 KANEKO DENTAL OFFICE
日本口腔インプラント学会指導医・専門医
歯学博士
金子 泰英