「GWに歯が痛くなった妊婦さんが、1ヶ月待ちを告げられてうちに来た話」
歯科医師として、この仕事を選んだ理由はひとつです。
「痛みを取ること」
それができないなら、歯医者をやめた方がいい。これは私が30年以上この仕事を続けてきて、今も変わらない信念です。
先日、そんな信念を改めて問い直す出来事がありました。
GW中に痛みを我慢し続けた妊婦さん
ゴールデンウィーク。多くの歯科医院が休診となるこの時期に、一人の妊婦さんが歯の痛みを必死に堪えていました。
「どこもやっていないから」
そう思って、ひたすら我慢していたのです。
連休が明け、ようやく近くの歯科医院へ。しかしそこで待っていたのは、さらなる消耗でした。
受付で1時間待たされ、ようやくカウンセリングを受けたものの、その内容は担当スタッフだけの情報で終わり、診療チームには一切共有されていませんでした。スタッフは院内に大勢いる。しかし患者さんが一人のスタッフに一生懸命説明しても、次のスタッフが来るとまたゼロから説明しなければならない。その繰り返しだったそうです。人数が多ければ良いわけではありません。情報が共有され、チームとして動いてはじめて、患者さんの負担は減ります。この医院では、それが機能していませんでした。
診察室に現れたのは担当の先生のみ。院長先生は院内にいるにもかかわらず、一度も顔を見せることはなかったそうです。
そして告げられた言葉が、これです。
「次の予約は1ヶ月後になります」
1ヶ月後では、遅すぎる
正直に申し上げます。
急性化膿性歯髄炎——これが今回の原因でした。歯髄の中で急性の炎症が起き、膿が溜まっている状態です。この病態は、すぐに処置をしなければ痛みは増す一方です。放置すれば周囲の骨にまで炎症が波及し、全身状態にも影響しかねません。
レントゲンを撮影すれば、経験ある歯科医師ならば即座に診断できます。さらに言えば、レントゲンがなくても、患者さんの症状——痛みの性質、持続時間、誘発因子——だけで急性化膿性歯髄炎の診断はほぼ可能です。「激しい自発痛がある」「冷たいものより温かいものに痛みが増す」「拍動するような痛み」——これらが揃えば、熟練した歯科医師ならば診断に迷いません。それほど明確な病態です。
1ヶ月後の予約では、痛みは取れません。悪化するだけです。
妊婦さんへの歯科治療——正しい知識を持っていますか?
しかも、患者さんは妊婦さんです。
「妊婦さんだから診られない」と断る歯科医院があることは、私も知っています。しかし、それは正確ではありません。安定期(妊娠中期、概ね16〜27週)に入っていれば、適切な配慮のもとで安全に歯科処置を行うことができます。
患者さんが特に不安を感じていたのが、レントゲン撮影の被ばくについてです。しかし数字で見れば、その不安は解消されます。歯科用デンタルレントゲン1枚あたりの被ばく線量は約0.01〜0.03ミリシーベルト。これは日常生活で自然界から受ける放射線量(年間約2.4ミリシーベルト)と比較しても、極めて微量です。さらに当院では防護エプロンを必ず着用していただきますので、子宮への影響は事実上ゼロといえます。安定期であれば、レントゲン撮影は安全に行えます。
局所麻酔についても同様です。歯科で使用する局所麻酔薬は胎盤を通過しにくく、適切な用量であれば母体・胎児ともに安全性が確認されています。
妊婦さんだからといって何もできない、というのは、率直に言って勉強不足です。むしろ、口腔内の炎症を放置する方が、早産や低体重児出産のリスクを高めることが研究で示されています。妊娠中こそ、歯科治療を適切に受けることが重要なのです。

その患者さんが、当院に来てくださいました。
まず行ったのは応急処置による除痛。炎症を起こした歯髄にアクセスし、圧を開放して痛みの原因に直接対処する。これが急性化膿性歯髄炎への正しいアプローチです。
処置後、患者さんの顔から力が抜けていくのがわかりました。
その後、適切なタイミングで抜髄(神経の処置)を行い、現在の経過は良好です。
「助ける」ことが、歯科医師の使命
私は、歯科医師という仕事の本質は「人を助けること」だと思っています。
痛みで眠れない夜がある。食事もできない日がある。それを解決するために、私たちはここにいる。
院長が患者さんの前に出ないこと。痛みを放置したまま1ヶ月後の予約を入れること。妊婦さんへの対応方法を知らないこと。スタッフが大勢いても情報が共有されず、患者さんが何度も同じ説明を繰り返さなければならないこと。
こうした現実が、今の歯科医療の一部に存在しています。これは批判のためではなく、患者さんに知っておいてほしいから、あえて書きました。
歯が痛い。それは「今すぐ助けを必要としているサイン」です。
当院は、その声に必ず応えます。妊婦さんの対応も、急性症状への即日対応も、院長である私が責任を持って診ます。
痛みで困っている方は、まずご連絡ください。
金子デンタルオフィス
日本口腔インプラント学会指導医 歯学博士 金子泰英
宇都宮市南大通り1-3-8
TEL:028-688-8100